その腕の中で サンプル
教師に頼まれた手伝いを終えて、廊下を歩く。なんとなく人通りの多い場所は通りたくなくて、空き教室が多い箇所を進んでいた。あとは自分のクラスに戻って、置いてある鞄を持って帰るだけだ。
ただでさえそういう場所なのに、放課後ということもあってか、とにかく人がいない。ラッキーだけど、これはこれで寂しい気もしてくる。
窓の外へ目を向けると、野球部が練習しているのが見える。こんな暑いのによくやるぜ。
そのまま足を進めていると、何かが聞こえてきた。人の声っぽい気がするけど、なんだか普通じゃない。誰か倒れてたりしねぇよな。
発生源に近づいていくと、甲高い女の声と濡れた音が耳に届いた。これって、まさか、こんなところで? 嘘だろ?
声が漏れてくる教室を、恐る恐る覗き込む。そこで見た光景に、目を疑った。男女がヤってるのは想像どおりだが、それが鹿島と堀先輩だったからだ。
いやいやいや。付き合い出したのは知ってるけど、なんで学校でヤってんだよ。他人に見られてもいいのか!? 現に俺に見られてるぞ!
視線の先で、鹿島が腰を振っている。蕩けた表情で先輩に抱きつき、甘い声を上げていた。鹿島のこんな顔、今まで見たことない。堀先輩だけが見るべき表情を、こんな形で俺が見ちまうのもなんか申し訳ねぇな。いや、そんなこと思う必要ねぇか。学校でヤるほうが悪いんだしな。
湿った音を発する箇所に目が向く。鹿島のあそこに出入りする、そそり立った先輩のものに息を呑んだ。
それにしても鹿島の奴、すげぇ気持ちよさそうだな。確かに、あんなので突かれたらすごそうだよな。俺も一回くらい味わってみてぇな。
ん? あれ、俺いま、何を考えた? 男に抱かれてみてぇって? いやいやいや、そりゃねぇだろ。普通ならこういう時って、鹿島が女なのを実感して意識するようになるとか、そういう感じじゃねぇの?
(中略)
「男に、抱かれてぇんだ」
真由が目を見張る。
「とにかく誰かに抱いてほしくて、男のあそこが気になって仕方ねぇんだよ」
望みを叶えるためには、蔑まれるのも覚悟で誰かに打ち明けるしかない。分かってても、真由の顔を見るのが怖ぇな。
真由が少し距離を詰めてきた。
「つまり男なら誰でもよくて、俺も例外ではないと」
「そう、なるな」
「ならしますか?」
真由に顔を向ける。その目からはやっぱり、真由の考えを読みとれない。けど、それでも、
「本気で言ってんのか?」
「はい」
「俺は男だぞ」
「分かってます」
真由の視線に、頭が熱くなってきた。
「お前がいいなら」