拍手お礼6
2017/10/10~2020/5/11の長きに渡り拍手お礼として置いていたものです。
鹿島くんがもし泣き上戸だったら、という小話です。大学生設定です。堀鹿は付き合ってます。
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「かんぱーい!!」
ガラスのぶつかり合う音が響く。場所は居酒屋、集まっているのは五人の男女だ。
その中の一人、御子柴実琴が顔をしかめながらビールを口にする。
「やっと佐倉も二十歳になったし、これで同い年のメンツみんな飲めるようになったな」
「そうだね。でもみこりん、ビール苦手なら無理して飲まなくても」
「べ、別に苦手じゃねぇよ。ほらあれだ、勢いよく飲み出したくせにすぐつぶれる奴ってかっこ悪いだろ? だから加減してんだよ」
「確かにそうかもね」
佐倉千代もビールを飲み、苦笑した。
「佐倉もビールが苦手なのか?」
野崎梅太郎が彼女を見る。
「苦手ってほどじゃないけど、やっぱりちょっと苦いなって。そのうち慣れるとは思うけど」
「そうか」
野崎が頷いた。すぐ横で悲鳴が上がる。
「おい鹿島、大丈夫か!? 酔ったのか!?」
野崎と佐倉が声のほうを向くと、テーブルに突っ伏した鹿島遊に御子柴が声をかけていた。
「鹿島くん、大丈夫!?」
鹿島の前には、半分ほどビールが残ったジョッキがある。
「もしかしたら鹿島も、堀先輩ほどじゃないが弱いのかもな」
「えっ、そんな。ど、どうしよう。先輩を呼んで連れて帰ってもらうとか」
鹿島の身体が跳ねた。
「せんぱい?」
「お、おい鹿島。大丈夫か?」
鹿島が上体を起こす。目の前の御子柴に、彼女が目を向けた。
「御子柴ぁ」
瞳を潤ませる鹿島に、周りが硬直する。
「おいイケメン、鹿島に何したんだよ」
「何もしてねぇよ!! おまえも見てただろ!?」
場の空気を気にせず、瀬尾結月が焼き鳥を食べながら鹿島を見た。
「どうした鹿島、やけにしおらしい顔しやがって」
鹿島の目元が更に濡れる。
「せんせぇ」
鹿島が瀬尾の胸元を掴んだ。
「先輩が、先輩が最近ぜんぜん会ってくれない!!」
大声で泣きながら、鹿島がその場にくずおれる。
「レポートやバイトで忙しいからって、なんど連絡してもつれなくて。私、先輩の彼女なのに! 最後に顔みたのいつかも分かんない!!」
瀬尾が肩をすくめた。
「おい野崎、堀ちゃんの連絡先しってんだろ?」
「あ、ああ。今メールを送ったところだ」
更に泣き続ける鹿島を、佐倉と御子柴がなだめ続ける。その光景に、野崎が視線をやった。
「鹿島は泣き上戸か」
「そんなこと言ってる場合じゃないよ野崎くん!」
周りの客たちの視線が、鹿島に向けられる。だが鹿島はそれに気づく様子もなく、ただ声を上げて泣き続けていた。
「まぁ泣きやまねぇもんは仕方ねぇし、とりあえず飲むか」
ビールを飲む瀬尾に、周りが呆れ顔を見せる。自分のジョッキを空にした彼女が、鹿島のジョッキを手にした。
「鹿島。おまえも嫌なことは飲んで忘れたらどうだ?」
「いや、弱い奴にあまり飲ませるのは」
鹿島が瀬尾からジョッキをひったくり、一気に呷る。残りの三人は、それを青ざめながら見ていた。
「か、鹿島くん。本当に大丈夫?」
鹿島がしゃっくりをする。
「んー……だいじょーぶー」
「いや、大丈夫そうには見えないんだが」
「うー、らってー」
また伏せた鹿島の顔を、佐倉と御子柴が覗き込んだ。
「鹿島くん、お水もらおうか?」
「お、おい鹿島。いちど外の風に当たったほうが」
「鹿島!!」
聞こえた声に、全員が振り返る。
「堀、先輩?」
息を切らして立つ堀政行に、野崎が無感情な目を向けた。
「思ったより早かったですね、先輩」
堀が野崎を睨む。
「おまえなー、人をなんだと」
「ほり、せんぱい?」
鹿島が顔を上げた。堀の姿を認めた瞬間、またその瞳が濡れ始める。
「せんぱい」
堀が鹿島に近づいた。
「鹿島、大丈夫か?」
髪を撫でられ、鹿島が目を閉じる。
「はい、らいじょうぶです」
「どこがだよ」
肩をすくめた堀が、鹿島の身体を引き上げた。彼女の腕を自分の首元に回させ、細い腰を抱く。
「悪い、こいつ連れて帰る」
「はい、お願いします」
「ああそうだ、金は」
「それはこっちでなんとかします。大した金額じゃありませんし。強いて言うなら、この後のことを聞かせてもらえたら」
「機会があったらな」
鹿島の身体を支えながら、堀が歩き出す。鹿島が顔を上げ、彼を見た。
「先輩」
「俺の部屋いくぞ。おまえんちより近いだろ」
「いいんれすか? レポートとか」
「おまえな」
堀が彼女に視線を向ける。
「こんだけ酔っ払った彼女ほっぽってレポートなんてできるわけねぇだろ」
鹿島が目を丸くする。何秒か経って、表情を緩めた。彼女の頭を、堀がまた撫でる。
「いま泣いたカラスがもう笑ったな」
「えっ? なんれすか?」
「別に」
鹿島の腰を抱き直し、堀が足を進める。
「吐きそうになったら言えよ」
「はーい」
明るく笑った彼女に、彼が口元を緩めた。
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update 2020/5/11