その胸に花は咲く
のざちよ・堀鹿前提のちよかしです。女の子同士でキスとかしてるので、苦手な方はご注意ください。
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私と鹿島くんは、ほとんど同時に彼氏ができた。私は野崎くんと、鹿島くんは堀先輩と付き合い始めたんだ。
「それで野崎くんが、たくさんチーズケーキ作ってくれてね。すっごくおいしかったんだけど、また太っちゃいそう」
向かいで鹿島くんが笑う。
「千代ちゃんもともと細いし、少しくらいふっくらしても問題ないと思うよ」
「そうかな?」
スプーンでパフェをつつき、いちごを口に運んだ。甘ずっぱくておいしい。
「鹿島くんは、パフェとか好きな割にすらっとしてるよね。やっぱり、お芝居してるから?」
「そうだろうね。演劇って体力つかうし」
鹿島くんもスプーンを使い、アイスをひとくち食べる。彼女の赤い唇に、目が向いた。
「ねぇ、鹿島くん。堀先輩と、キスしたことある?」
「えっ?」
鹿島くんが目を丸くする。
「あるけど、どうしたの急に」
彼女がまた、アイスを口に含んだ。
「千代ちゃんも、野崎とキスはしたんでしょ?」
軽く頷く。
「うん。ただ、鹿島くんからはそういうの、あまり聞かないなって思って」
「そうだっけ? それなりに話してるつもりだけど」
鹿島くんがストローをくわえ、アイスティーを飲んだ。その唇は堀先輩を、男の人を知っている。思わず唾を飲んで、パフェのケーキを口に入れた。何度も噛んで、それをのどに流し込む。
「鹿島くん、キスより先のことはしてる?」
鹿島くんがまた、目を丸くした。視線を泳がせて、俯く。
「そう言う千代ちゃんは?」
「私? 私は」
ストローでアイスティーをかき混ぜた。
「まだだよ。野崎くん、少女漫画みたいに、順番とか気にするから。でも、それだけ私のことを大事にしてくれてるんだと思う。それに私、野崎くんと一緒にいられるだけでも嬉しいから」
鹿島くんが、声を立てて笑う。
「千代ちゃんは健気だね。片思いが長かったからかな。私はもう、そこまで謙虚じゃいられないよ」
ウエハースをかじる鹿島くんを眺めながら、ストローをくわえた。紅茶をすすり、彼女を見つめる。「もう」ってことは、謙虚だった時があるってこと? だとしたら、どうしてそうじゃなくなったんだろう。
ただお菓子をかじるだけなのに、鹿島くんの動作は品と色気がある。品は前からあったけど、こんなに彼女は色っぽかっただろうか。
紅茶を飲み干すと同時に、理解してしまった。彼女は自分の身体に、男性を受け入れたことがあるんだ。
融けかけの氷が音を立てる。それがやけに耳についた。
野崎くんの手が、私の頬を撫でていく。
「佐倉、大丈夫か?」
荒い息をつきながら、彼を見上げた。
「うん」
「痛くないか?」
「大丈夫だよ」
ちょっと痛いけど、それ以上に嬉しいから。
「野崎くん。私いま、すごく幸せだよ」
野崎くんが、安心したように微笑む。
「痛い、とか重い、とか遠慮なく言ってくれ。俺もなるべく気をつけるが、この体格差だからな」
「分かった」
私の中が、野崎くんで満たされている。そう考えるだけで心が温かくなってくる。鹿島くんも堀先輩に抱かれて、同じような気持ちになってるんだろうか。
「佐倉?」
野崎くんが心配そうな顔を向けてきた。
「ぼーっとして、どうした? 痛いのか?」
「ううん」
首を左右に振って、野崎くんに手を伸ばす。
「続けて」
その手を取ってくれた彼を見ながらも、頭の中は鹿島くんのことでいっぱいだった。
放課後の教室で一人、席に着く。クラスの子はみんな、帰ったり部活に行ったりした。私も今日は部活がないし、帰ったほうがいいんだろうけど、なんだかそんな気分にならない。
廊下から足音が聞こえる。
「あれっ、千代ちゃん」
鹿島くんが顔を覗かせてきた。
「どうしたの? 帰らないの?」
「うん。ちょっとね」
鹿島くんが教室に入ってくる。
「何か、嫌なことでもあったの?」
「そういうのじゃないよ。心配してくれてありがとう」
彼女を見上げ、笑う。
「ねぇ鹿島くん。ちょっと話していかない?」
「えっ?」
鹿島くんが何度かまばたきした。
「別にいいけど」
近づいてきた鹿島くんが、私の隣の席に腰を下ろす。
「あのね、鹿島くん」
横の彼女に目を向けた。
「私、野崎くんとセックスしたの」
「えっ!?」
鹿島くんが目を見開く。
「そうなんだ。おめでとう、って言うのはなんか違うかもしれないけど、よかったね」
笑顔を向けてくれる彼女に、視線を注いだ。
「それで気になったんだけど、鹿島くんはどんなふうに堀先輩に抱かれてるの?」
鹿島くんが眉を下げる。
「どんなふうにって、どういう」
「どんな顔で、どんな声で、堀先輩を受け入れているか。私に教えて?」
身を乗り出して、彼女の肩に手を置いた。目を閉じて、唇を重ね合わせる。野崎くんの少しかさついたのとは違う、柔らかな唇。すごく気持ちいい。
顔を離すと、鹿島くんが目を見張っていた。
「千代、ちゃん?」
手を下にずらして、彼女の胸に触れる。小さいけどほのかに膨らんでて、柔らかい。
「何、してるの」
「知りたいだけだよ。鹿島くんが、どんな反応するか」
胸に右手を這わせて、左手で脚のあいだを撫でつけた。鹿島くんの肩が跳ねる。
「千代ちゃん、やめて」
「なんで?」
困った表情を浮かべる彼女の頬に、キスをした。
「鹿島くん、かわいいよ」
また短パン越しに、そこを撫でる。鹿島くんが震えて、私を見た。
「千代ちゃん。こんなの、おかしいよ」
「そうかな」
再び鹿島くんの唇に口づけする。
「私ね、男の子で好きなのは野崎くんだけど、女の子では鹿島くんが好きなんだよ。気づいたのは、今さっきなんだけど」
鹿島くんの太ももを手のひらでなぞった。
「好きな子のかわいいところ、見たいって思うのは普通でしょ?」
鹿島くんに顔を寄せる。
「ねぇ鹿島くん。私とも付き合わない?」
笑顔を向けると、彼女が身体を引いた。
「そんなこと、できるわけ」
「大丈夫だよ。男の子みたいに、中に入れるわけじゃないから。浮気のうちには入らないよ」
鹿島くんが、悲しそうに下を向く。
「入るよ」
「でもね、鹿島くん」
鹿島くんの大事なところを、何度も手でこすった。
「女の子同士だから、男の人よりも鹿島くんの気持ちいいところ、分かるかもしれないよ」
鹿島くんの胸元に、自分の胸をすり寄せる。
「柔らかいでしょ? 触ったらどんな感じか、とか気にならない?」
息をついて、彼女が目を向けてきた。
「女の子はかわいいと思うけど、そういうふうには」
「そうだよね。鹿島くんはみんなの王子様だもん。でも実際にやってみたら、気も変わるんじゃないかな」
鹿島くんの頬を撫でる。
「一回、試してみない? 大丈夫だよ。鹿島くんが知ってる男の人は堀先輩だけってことには、変わりないから」
鹿島くんの瞳が揺れた。
「鹿島くん。私とキスして、どうだった?」
「どうって。柔らかいな、とは思ったけど」
「気持ちよかった? 堀先輩とのキスと、どっちがいい?」
鹿島くんが視線を逸らす。彼女の唇を、指先で辿った。
「私は鹿島くんとのキス、気持ちいいと思うよ」
また唇を触れ合わせる。鹿島くんの両肩を掴んで、吸いつくようなキスをした。顔を離して、彼女に笑いかける。
「抵抗しないってことは、そういうことだって思っていい?」
赤い頬で、鹿島くんが俯いた。満面の笑みで、彼女の髪を撫でる。
「鹿島くん。一緒に、気持ちよくなろう」
額に口づけて、鹿島くんを抱きしめる。少し経って、彼女から抱き返された。
「千代ちゃん、私」
「大丈夫」
再度、鹿島くんの髪に触れる。
「大丈夫だから」
こんなにかわいい鹿島くんを、堀先輩にひとり占めさせたりはしない。
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update 2017/7/22