拍手お礼3
2015/12/14~2016/11/20の拍手お礼です。ポルノの「アゲハ蝶」ネタの小話です。歌詞をそのまま使うのはあれなので、要約して用いています。
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オレンジの光が窓から差し込む。部員のいなくなった部室は、部活中の賑やかさが嘘のように静まりかえっていた。部長である堀先輩と共に戸締まりをして、一息つく。
「先に帰ってよかったのに」
「いやー、せっかくなので先輩と一緒に帰りたいと思いまして。途中まで同じ方向ですし、いいでしょう?」
堀先輩へ顔を向ける。後ろを向く彼の肩が、わずかに上下した。
「勝手にしろ」
「分かりました! じゃあ戸締まりも終わりましたし、帰りますか?」
「そうだな。俺が職員室に鍵を持ってくから、おまえは」
「待ってろっていうんですか? それは別にいいですけど、先輩また戻ってくるの面倒じゃないですか?」
堀先輩が振り返る。私の顔を見て少し考え、頷いた。
「じゃあ、一緒に行くか」
「はい!」
笑顔で頷いて、鞄を手に取る。堀先輩も自分の鞄を持ち、揃って部室を出た。堀先輩がドアの鍵をかけ、二人で歩き出す。しばらく並んで足を進めていると、不意にある曲の歌詞が頭をよぎった。
「先輩。少し古いんですけど、『あなたに会えて世界に光が満ちた。あなたに夢で会えるだけでよかったのに、愛されたいと願ってしまった』って感じの歌しってますか?」
堀先輩が、訝しげに私を見る。
「何だ急に」
「いえ、何となく思い出したので。知ってます?」
「知らねぇ。知ってたら何なんだ」
「別に何もないですよ。ただ、少し私に似てるなって思っただけです。私も先輩と出会えて、世界に光が満ちたような気がしましたから」
目を丸くした堀先輩に、笑ってみせた。
「まぁ私の場合は、夢で会えるだけでいいなんて控えめなこと、考えたことなかったですけど」
私は、浪漫学園の文化祭で初めて先輩を見た時から、堀先輩に近づくことを考えていた。近づいて、隣に並んで、一緒に舞台に立ちたかった。
堀先輩が立ち止まる。私も足を止めて、彼を見た。
「どうしたんですか? 先輩」
「その歌詞がおまえと似てるってことは、おまえは俺に愛されてぇのか?」
堀先輩を見ながら、目をしばたたかせる。真剣な表情の彼に、顔をほころばせた。
「そりゃあもう。だって私は、堀先輩の一番かわいい後輩ですから!」
ガッツポーズをした私に、堀先輩が呆れ顔を見せる。
「そういう奴だよな、おまえは」
堀先輩がまた歩き出す。私も足を進めて、彼の横についた。例え舞台の上じゃなくても、こうして彼と並んでいられることが嬉しい。こんな日常を守れるなら、私は彼の後輩でいい。それ以上の関係は望まない。少なくとも今はそう思っている。でもあの曲の主人公と同じように、いつか彼への願いや欲求が変化するかもしれない。まぁ、その時はその時だよね。
少し見下ろした位置に見える彼の横顔に、少し口元が緩んだ。
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update 2016/11/20