ごめんなさい
ちよかしを書きたかったのですが、千代ちゃんがあれな感じになってしまいました。
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どうしてだろう。こんなはずじゃなかったのに。
「千代ちゃん、どうしてこんなこと」
鹿島くんが怯えた目で私を見ている。うん、どうしてだろうね。
「しゃべらないで」
鹿島くんが肩を跳ねさせた。口をつぐんだまま、目で訴えてくる。理由を教えてほしいって。
「教えないよ。だってきっと、分かんないもん」
ごめんね、鹿島くん。でも、私にも分からないんだ。何でこんなに、腹が立つのかなんて。
「鹿島くんは、そこにいればいいの」
どうしよう。怯えてる鹿島くん、すごくかわいい。でも怯えてるのは私にいきなりされたからで、彼が恋人同士の触れ合いの一環として同じことをしても、きっと鹿島くんは受け入れるんだろうな。
「ごめんね、鹿島くん」
鹿島くんと彼がうまくいくのを、応援していたはずだった。彼の前では女の子らしくなる鹿島くんを、微笑ましく見守っていたつもりだったんだよ。でも、つもりだけだった。
「私ね、堀先輩に鹿島くんを渡したくないんだ」
鹿島くんの瞳が揺れる。それを見ていると、何となく分かった気がした。
「鹿島くんのかわいい部分、ひとり占めしたいからだよ」
うん、そうだ。私は、鹿島くんのかわいい女の子な部分を、堀先輩に見せたくないと思ってる。でも鹿島くんが堀先輩と付き合い出したら、きっとそういうところも見せることになる。
「だから、鹿島くんが堀先輩の告白にOKしないっていうのなら、外してもいいよ」
鹿島くんが目を見開いた。無理だよね、ごめんね。分かってるんだ。だって鹿島くん、堀先輩のこと大好きだもんね。告白されて、嬉しかったよね。先輩と、付き合いたいよね。ごめんね。
「本当にごめんね、鹿島くん。自分でも、変なことしてるって分かってるんだ。なのにやめられないなんて、おかしいよね」
おかしいよ。だって私と鹿島くんは、女子同士で友達なのに。鹿島くんが堀先輩を思っているように、私にも野崎くんという好きな人がいるのに。何で、鹿島くんと先輩の仲を邪魔しようとしてるんだろう。私だって、野崎くんといい感じになったのを誰かに阻止されようとしたら嫌なのに。
鹿島くんが私を見つめる。その目は、私を心配しているように見えた。
「それでも私、鹿島くんが堀先輩をフってくれるまで、これ外してあげられないよ」
たぶん私は、男の子でいちばん好きなのは野崎くんだけど、女の子で一番は鹿島くんなんだと思う。結月も大事な友達で好きだけど、結月への好きと鹿島くんへの好きはまた違う。背が高くてかっこいいのに、かわいい女の子な鹿島くんが大好きだよ。
「変だよね。私、知ってるんだ。鹿島くんが一番かわいくなるのが、誰の前でなのか。その人と鹿島くんを離したら、きっと鹿島くんは今までみたいなかわいいところ、見せてくれなくなるって分かってるんだよ」
なのにその人と鹿島くんを離したくてたまらないなんて、どうかしてるよね。ごめんね、好きだよ。ごめんね、きっと許してくれないよね。ごめんね、鹿島くん。ごめんね。
床に座った鹿島くんが、小さく身じろぎする。手錠の鎖がかすかに立てた音が、場に響いた。
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update 2015/12/1