お兄ちゃんは言わせたい | Of Course!!

お兄ちゃんは言わせたい

兄が暴走しているだけのアホな話です。

 

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 弟のヴァッカリオは強く、優しく、しかも二枚目だ。弟の魅力はとても一言で言い表せるものではない。全て話そうと思えば、弟が生まれた頃までさかのぼる必要がある。一日かけても語りつくすことはできないだろう。心根の優しさは幼い頃から変わらず、それをひと通り語るだけでも相当の時間を要するのは想像にかたくない。

 それほどまでに素晴らしい弟だ。同性、しかも実の兄である私でさえ、兄弟の枠を超えて魅了されるのも道理なのだ。

「つまり私は、お前を弟としてだけではなく、一人の男としても愛している」

 弟が眉を下げる。

「その結論だすまでに、ちょっとでも迷わなかったの?」

 目をしばたたかせ、弟を見た。

「迷う? 何をだ?」

「そういうとこだよ、お兄ちゃん」

 弟が何やら思考する。

「あの、お兄ちゃん。いちおう訊くけど、つまりお兄ちゃんは、おいらに恋愛感情があるってことだよね?」

「無論だ。他の意味に聞こえたか?」

「やっぱりそうだよね」

「それで訊きたいのだが、お前は抱くほうと抱かれるほう、どちらがいいのだ?」

 弟が目を丸くした。

「なんの話?」

「私としては、お前が望むのであれば、どちらの立場にでもなる心づもりだが」

「待って。なんでそういう仲になる前提で話が進んでるの? おいら返事してないよね」

 今度は私が目を見張る。

「そうだったな。すまない、気が急いてしまった。ヴァッカリオ、お前はこの兄をどう思う? 兄としてだけではない感情を、私に抱いているか?」

 弟が困り顔を見せた。

「考えたことないよ。お兄ちゃんはお兄ちゃんだし」

「では、いま考えてほしい。お前の気持ちを知りたい」

「急だなあ」

 苦笑して、弟が思案する。そんな姿も弟は絵になるな。これほどにいい男は、他に見たことがない。そんな弟だ、もしかして私に言わないだけで、やはり付き合っている人がいるのではないだろうか。いやそれなら、私への返答で悩んだりはしない。すぐに恋人の存在を明かし、断ってくるはずだ。

 弟が視線を向けてくる。何か言っているが、小声で聞き取れない。

「ヴァッカリオ。すまぬが、もう少し大きな声で言ってはもらえぬだろうか」

 ためらいがちに、弟が再び口を動かした。

「すまない、まだ聞こえない」

 弟が顔を紅潮させる。耳まで真っ赤になりながら、私と目を合わせた。

「あのね。お兄ちゃんとキス、するのは考えたよ。恋人同士がするようなの。その、嫌じゃないなって思った」

「本当か!? つまりお前も私と同じ気持ちだということでいいのか?」

 弟が赤い顔のまま固まる。顔を逸らし、両手で覆った。

「そういうことでいいと思います」

「つまり、具体的に言うと?」

「えー、そこまで言わないといけない?」

 弟が深呼吸する。少し経って、口を開いた。

「おいらも、お兄ちゃんが好きです! お兄ちゃんに恋してます!!」

 弟をしばし見つめ、抱きしめる。

「嬉しいぞヴァッカリオ! これで私たちは晴れて恋人同士だな。では改めて訊くが、お前は抱く側と抱かれる側のどちらがいい?」

「待って、待ってお兄ちゃん。いきなりそういう話やめてってば」

 身じろぎする弟を解放した。

「付き合い始めたばかりでそういうの気にするってさ、早すぎない? もしかして、その、溜まってるの?」

 何度かまばたきして、弟を見る。

「確かに、性急すぎたかもしれない。お前の身体が目当てだと思われても仕方がない」

「それは思わないよ。身体目当てで実の弟にいかないでしょ普通」

「だが私は一刻も早く、お前と深く触れ合った思い出が欲しいのだ。お前とこうして話ができるのも、あと何度あるか分からない。お前は必要があれば神器を起動させ、戦地に赴くのだろうからな」

 弟が神妙な顔をした。

「お兄ちゃん」

「だから、性急なのは承知で確認したい。お前は私とまぐわう時、どちらがいいのかを」

「まぐわうって」

 弟が眉間を押さえる。

「私と同じ気持ちを抱いていると感じてくれたのであれば、私との行為も想像できたのではないか?」

「いやキスまでだから! そこから先は想像してないから!」

 弟の目がこちらを向いた。

「うーん、そうだな。お兄ちゃんと、そういうことね」

 再度、弟が赤面する。

「お前が考えつかぬのであれば、私が決めるべきか。そうだな、私がより負担の大きいほうに回ろう。となると、抱かれる側だろうか」

「えっ?」

 弟が赤い顔で考えた。

「それはちょっと、絵面が犯罪的じゃない?」

「では、私がお前を抱こう」

「うーん、それはそれで恥ずかしいな。その、お兄ちゃんはどっちがいいっていうのないの?」

「ないな。先ほども言ったが、お前が望むのであれば、どちらでも構わない」

「そういうの困るなあ」

 弟がうなり声を上げ、思考する。本当にいい男だ。どんな名画や彫刻も、弟の前ではかすんでしまうな。

「そうだヴァッカリオ。決めずに行為を始めてしまうのもありではないか? その時の流れもあるだろう」

「流れで決めるの!? 受け入れる側ってそれなりの準備いるでしょ」

「では先に決めておくか。そうだな、やはりお前に負担が少ないほうがいいだろう。私が下に」

「だから絵面が犯罪だって! おいらが抱かれるほうでいいから!」

 真っ赤になった弟に、笑いかける。

「そうか! ではさっそく始めよう! いつお前とそうなってもいいように、必要なものは買ってあるのだ」

「今から!? しかもなんで準備万端なの!?」

 弟の手首を掴み、腕を引いた。

「あの、お兄ちゃん? どこに行くのかな?」

「ベッドルームに決まっているだろう。大丈夫だ、お兄ちゃんに任せるといい。男性同士での行為の予習はしている」

「だからなんでそうなる前提で準備してるの!?」

「優しくしてやるからな」

「その前に心の準備させて!!」

 

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update 2020/8/10