全て見せて | Of Course!!

全て見せて

セックスしないと出られない部屋に閉じ込められる話ですが、してません。

 

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 白と黒の青年ふたりが、夜の闇を駆けていく。一つの建物に狙いを定め、侵入を果たした。彼らが入った小さな部屋は、ランプでほの明るく照らされているが誰もいない。それどころか物ひとつなく、がらんどうだった。

「なんで誰もいないのにランプ点いてんだ?」

「さあな。そもそも部下たちの調べでは、ここは物置のはずだが」

 黒をまとったケネスが部屋を見渡す。

「これのどこが物置なんだ。ただの空き部屋じゃねえか」

「そうだな。だとしたら、余計にランプの明かりが妙だ」

 白に包まれたギャスパーが、ランプを見つめた。

「まさか我々の動きに感づかれて、何か罠を仕掛けられたのか?」

「なんだそれ。ここに落とし穴でもあるっていうのか?」

 ギャスパーが目を細める。ランプの明かりを頼りに、床を見つめた。

「不自然な切れ目などはないようだが」

「そうだな」

 同じように床をあらためていたケネスが、顔を上げた。

「あれ」

 ギャスパーも頭を上げる。二人の視線の先に、一枚の貼り紙があった。

「あんなの貼ってあったか?」

「気づかなかっただけだろう」

 揃って近づき、貼り紙を見る。そこには、『ここはセックスしないと出られない部屋です』と書かれていた。大声を上げそうになったケネスが、慌てて抑える。

「なんだこれ」

「私に訊くな。こんなもの理解できるか。罠だとしても意図が全く分からない」

「だよな」

 ケネスが扉に近づく。ノブを回して扉を押してみるが、開かない。屈んでノブの周りを見回しても、鍵穴は見当たらなかった。

「外鍵か?」

「そうだろうな」

 ケネスが肩をすくめる。

「しょうがねえ。いちど出て、別の部屋から入り直そうぜ」

 振り返った彼が、目を見開いた。ギャスパーが訝しげに後ろを見て、同じように驚く。彼らの見つめる先は、ただの壁だった。

「なあギャス。俺たちの入ってきた窓って、あそこにあったよな」

「そのはずだ」

 二人が何度も、部屋の中に視線を巡らせる。だがいくら見ても、窓は見当たらなかった。

「なんだここ。まさかあの煙館のお仲間か?」

 ギャスパーが貼り紙をまた見る。

「同時に見る幻としては、ずいぶん趣味が悪いな。しかも今回は、どこも打っていないはずだが」

 ケネスが扉に目線を向ける。

「あそこから出るしかなさそうだけど、中から開ける方法がないっていうのがきついな」

 ケネスも貼り紙を見返した。文字通り八方ふさがりといえる状況をどうにかするには、可能性のある方法を試してみるしかない。

「やってみるか」

「何を」

「セックス」

 ギャスパーが眉を寄せた。

「ふざけている場合か」

「ふざけてねえよ。窓はない、扉も開けられない。なら、こいつに書いてあることを信じてみるのも手じゃないか?」

 ギャスパーがケネスを見る。ケネスも視線を返した。

「窓が消えるなんて普通じゃねえ。なら、常識的に信じられない貼り紙の内容が本当ってこともありえる」

「そうかもしれないが、抵抗感はないのか? 我々はどちらも男だ」

「そりゃお前は男とするの嫌かもしれないけど、今ここには俺たち二人しかいねえ。セックスするなら俺たちになるだろ」

「確かに、するならそうだが」

 ギャスパーが目を見張った。

「ケネス。私は嫌かもしれないというのは、お前は嫌じゃないということか?」

「そうだけど」

 ケネスが口角を上げる。

「お前となら、構わない」

 ギャスパーの腕を掴み、ケネスが顔を寄せた。

「待て、ケネス」

 ギャスパーがケネスの身体を押し返す。

「こんな形で関係を結ぶのはおかしい」

 ケネスがまた笑った。

「こんな形じゃなきゃいいのか? 俺とヤること自体は構わないのか」

 ギャスパーが眉を下げる。

「それは」

「俺とヤってもいいって思ってるなら、別に今、こういう形でもいいだろ。美学にこだわってたら、一生ここから出られねえかもしれないぜ」

 身体を引いたギャスパーに、ケネスが近づいた。自分の仮面を外し、表情を崩す。

「異常事態なんだ。お前も仮面なんて捨てて、むき出しになっちまえよ」

 ケネスを見つめ、ギャスパーが考える。確かにこの状況は異常だ。もしかしたら本当にここは、貼り紙に書かれた通りの部屋なのかもしれない。自分たちは幻を見ているのか、それとも夢なのか。そのどちらだとしても、これは現実ではない。なら、悩まなくていいのかもしれない。

 ギャスパーが仮面を外す。嬉しそうに目を細めたケネスに、顔を近づけた。互いの帽子がぶつかり、顔を見合わせる。

「ああ、これ忘れてた」

 ケネスが帽子を脱ぎ捨てる。ギャスパーの帽子も奪い、床に投げた。

「お前も、ヤるには邪魔だろ」

 ギャスパーが口元を緩める。

「そうだな」

 ケネスが彼を見た。

「じゃあ改めて」

 再び顔を寄せ合い、唇を重ね合う。ケネスがギャスパーの背中に手を回した。ギャスパーもケネスの身体を抱きしめ、柔らかな唇の感触を味わった。しばらく口づけ合い、顔を離す。相手の瞳に情欲の色を見て、口の端を上げた。

「お前が抱くほうでいいぜ。好きにしろよ」

「お言葉に甘えて、そうさせてもらおう」

 あとは欲望の赴くままに、互いをさらけ出すだけ。異常なひと時に酔いしれながら、再び口づけを交わした。

 

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update 2018/11/19