オレ達は許嫁
没SSから掘り出してきました。pixivでは「没ネタ供養」という題で2014/3/31に上げたものに入れてます。
エレンが女の子になったりしてるのでご注意ください。エレミカはいちど面識があるという設定になってます。
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「あなたがエレンなの? 本当に?」
目の前にいる女が、頭のてっぺんから爪先までオレを見る。無理もない。
「私の記憶では、エレンは男の子だったはず。だがあなたは、どう見ても女の子だ」
「ああ、まあ、そうだろうな」
女の視線が、オレの胸元に浴びせられている。この女も充分にスタイルはいいが、下手したらオレの方がでかいかもしれない。
「触ってみてもいい?」
「……勝手にしろ」
女が人差し指で、オレの胸をつついてきた。何だか、変な感じだ。
「柔らかい。詰め物のような感じではない」
そいつの視線が、胸から下りる。今度はオレの股間を見ているようだった。
「いくら見ても、ついてないものはついてないぞ」
「じゃああなたは、本当に女の子なの? 女の子だが、私の知ってるエレンなの?」
「まあ、今の姿だと完璧に女だな」
「今の姿?」
女が不思議そうに首を傾げる。
「ああ。悪いけど、湯があったら少し欲しい」
「今はないが、どうしても必要なら沸かす」
「じゃあ、頼む」
そいつが台所に向かう。一応、オレがあいつの記憶にあるエレンだというのは信じてくれたのだろうか。
本当ならオレだって、こんな姿で再会するはずじゃなかった。あいつに会えるのを楽しみにしてたのは、オレもなんだ。親の決めた許嫁だけど、幼い頃にいちど会った時から、オレはあいつ――ミカサに惚れていたのだから。
しばらく経って、ミカサが湯気の立つやかんを持ってきた。どう見ても熱湯だが、湯の使い道を教えていなかったのだから、冷ましたりなんてしてるわけないよな。
「ありがとな、ミカサ」
「別に、いい」
ミカサがオレから目を逸らす。多分、オレとどう接すればいいのか分からないんだろう。まあいい。火傷するかもしれないけど、それよりはミカサを安心させてやる方が先だ。
オレが湯を頭から被ると、ミカサが目を見開いた。だがすぐに、信じられないという顔になる。
「嘘だ。こんなことが、あるなんて」
「そう思うのが普通だよな」
どう見ても女だった奴が、湯を被っただけで男になれば、誰でもそう言いたくなる。
ミカサは改めて、オレを上から下まで見た。
「どう見ても男の子」
「当たり前だ。この姿で女に見えるなんて言われたら、さすがに傷付くぞ」
「どういうことなの? どっちが、本当の姿なの?」
本気で困っているミカサには申し訳ないが、うろたえている様子がかわいい。抱きしめたくなるが、それはきちんと全てを話してからだ。
「こっちが、本来のオレだ。六年前にお前と会った、お前の許嫁のエレンだ」
目を丸くしていたミカサが、涙を滲ませる。両手で口元を押さえて震えていたかと思うと、オレに抱き付いてきた。
「エレン、本当にエレンなのね! 会いたかった! ずっと会いたかった!」
ミカサを抱き返してやると、頬をすり寄せてきた。柔らかい髪が触れてきて、くすぐったい。
「オレも会いたかった。ミカサ」
抱きつく力を強めるミカサの頭を撫でながら、オレは考えていた。性別が変わるという現象について、ミカサにどう話せばいいのかを。
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update 2016/5/28