二人の錬金術
没にしていたSSです。pixivでは「没ネタ供養」という題で2014/3/31に上げたものに入ってます。
大佐と中尉の過去をパロろうとした結果、迷走しました。
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一つの墓の前に、少女が立っている。オレは少女の後ろ姿を、ただ見ているだけしかできなかった。
墓の下に眠っているのは、彼女の母だ。オレの錬金術の師匠でもあったその人を、オレは救えなかったんだ。医療系錬金術を専門にしておきながら、このザマだ。
「エレン」
少女が、オレの名前を呼ぶ。
「あなたはまだ、術を学びたいと思っている?」
「ああ。師匠が知っていた錬丹術についても、教えてもらえなかったしな」
ここから遥か東にある国では、錬丹術と呼ばれる錬金術に似た術があり、医療方面に特化している。仮にも医療系錬金術の使い手であるオレはその術を学びたかったけど、結局は大して教われなかった。
少女は、墓の方を向いたまま俯いている。父親はずっと前に亡くなっているらしく、肉親は母親しかいなかったというのだから、よほどショックだったんだろう。
「ミカサ。お前はこれから、どうするんだ」
「……どうすればいいのだろうか。頼れる親戚もいないし、どこに行けばいいのか、分からない」
淡々とした声に、どう返せばいいのか分からなくなる。何と言えば、目の前のミカサを慰められるのだろうか。
「お前は、オレを恨んでいるか? 何で助けられなかったのかって」
「別に、恨む理由がない。いくら医療系の術と言っても、どんな病気だって治せる万能な力というわけではないでしょう」
「ああ、確かに」
ある程度の怪我を治すことはできるが、師匠が患っていたような命にかかわる病気を治せるものじゃない。分かっていても、自分が腹立たしくなる。
「そうだ、ミカサ。お前、オレの家に来ないか?」
「エレンの家?」
「ああ。父さんも母さんも、いい人だぞ」
振り返ったミカサは、「いいの?」と言うような顔をしていた。頷いてみせると、ミカサが身体ごとこちらを向く。
「ありがとう。では私もお礼に、エレンに術を教える」
「術?」
「そう。お母さんの家で代々受け継がれてきた秘伝の術を、今は私が持っている」
ミカサが、手首に巻いていた包帯を解く。そこには、入れ墨が彫られていた。
「こうやってずっと、伝えられてきた。この術をあなたにあげる」
「お前は、それでいいのか? 大事なものなんだろ」
「私は錬金術を使えないので、構わない。お母さんが遺した術を、使わないままでおくのは惜しい。錬金術を分かる人に、受け継いでもらった方がいい」
オレを見るミカサの手を取って、引っ張る。
「どっちにしろ、詳しい話は後にしよう。まずは帰るぞ」
ミカサが目を丸くする。だが、すぐに頷いた。
「うん、帰る」
「……じゃあまずは、包帯を巻き直せ。途中で誰かに見られたら、誤解されるかもしれない」
また頷いて包帯を巻き直すミカサを見ながら、両親にどう説明するべきか考えていた。
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update 2016/5/28