願いの果てに | Of Course!!

願いの果てに

現代パラレルじゃないほうがいいかとも思いましたが、進撃世界にQBがいるのが想像できませんでした。

バッドエンドですのでご注意ください。

 

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 学校から帰っていたら、いきなり、変な生き物に出くわした。

「何だろう。初めて見る」

 しゃがんで頭を撫でる。耳が明らかに猫ではないし、犬でもないし、本当に何だろう。

「君、もしかして僕が見えるの?」

「えっ?」

 少年のような高い声が聞こえ、辺りを見回す。しかし、夕方の公園には私以外に人間がいない。

「今の、誰?」

「やだなあ。君の目の前にいるじゃないか」

 目の前? そんなことを言われても、白くてよく分からない生き物しかいない。まさか、そんなことがあるのだろうか。

「あなた、なの?」

「そうだよ。僕の姿が見える人間と会ったのは久しぶりだから嬉しいな」

 頭の中に直接、声が響いているように感じる。テレパシーというものなのかもしれない。

「あなたは、他の人には見えないの?」

「普通は見えないね。でも、君には僕が見えている。だから君には、きっと資格がある」

「資格?」

「うん。僕と契約して、魔法少女になってよ!」

 魔法少女と言うと、日曜の朝に放映されているアニメに出てくるような存在だろうか。

「魔法少女というのが具体的にどのような存在か、分からなければ答えようがない」

「それもそうだね。簡単に説明すると、魔法を使って魔女と戦う少女達のことだよ」

「魔女と戦う?」

 アニメであれば、魔法少女が強い魔法を使えるようになると魔女になったりするものだと思うが、現実は違うのだろうか。

「なぜ戦うの」

「それはね、魔女が災厄をもたらす存在だからだよ。理由も分からないのにいきなり自殺する人っていたりするだろう?」

「身近で見たことはないが、聞いたことならある」

「それは魔女の仕業なんだよ。この町に現れた魔女が、君の大事な人を殺してしまう可能性もあるってことだね」

「……そんな」

 そんなことが、本当にあるのだろうか。私は、魔女とやらを実際に見てもいないのに、信じられるわけがない。しかしいま私の前には、言葉を操る謎の生き物が存在している。頬をつねってみても、やはりその生き物はいた。

「痛い。夢ではない。だが、にわかには信じられない」

「魔女を見たことない人間は、皆そう言うよ。それに魔女との戦いは、君に何のメリットもない状態でお願いできることでもないと思っている。でも、契約したら何でも願いが叶うと言ったらどうだい?」

 願いが叶う? 何でも?

「本当に、そんなことができるの?」

「うん。一つしか叶えられないけどね」

 ということは、「エレンとずっと一緒にいたい」と願えば、それが叶うのだろうか。彼は無鉄砲で怖いもの知らずで、同じ所に留まっていられる性格ではない。そんな彼とは、一緒に居続けるというだけのことも難しいだろう。だが、

「少し考えたい。魔女と戦い続けることになってでも叶えたい願いがあるか。あるとすれば、どのように願うのが最善なのか」

「大丈夫、答えは急がないよ。僕はいつもこの辺りにいるから、その気になったらいつでも呼んで。僕はキュゥべえって言うんだ」

「分かった。では、もしあなたと契約したいと思えば、ここでまた呼ぶ」

「うん。いい返事を期待してるよ。それじゃまたね、ミカサ」

 キュゥべえはそう言い残し、どこかへ去ってしまった。なぜ私の名前を知っているのだろうか。

 

 

「どうしたの? ミカサ。僕に何か相談があるんじゃないの?」

 ファストフード店で向かい合って座っているアルミンが、苦笑しながら私を見る。席に座って、もう五分は経っただろうか。

 アルミンがバニラシェイクを飲む。

「そんなに言いづらいこと?」

「言いづらいというか。自分だけで考えるのは不安だけど、どう話せばいいのか分からない。うまく伝わるとも思えない」

「大丈夫だから、話してみてよ」

 微笑むアルミンを見ていると、確かに大丈夫だと感じてきた。頭のいいアルミンのことだ。これから私が言う突拍子なことにも、きっと適切な答えをくれるだろう。

「アルミン。これから私が話すことは、物の例えだと思ってほしい」

「うん、分かった」

「その、謎の生き物から、邪悪な存在と戦うことになる代わりに、願いを何でも一つ叶えると言われたとする」

「えっ?」

 アルミンが目を見開いて、私を見る。

「言われたとする」

「あ、ああ、うん。ごめん、続けて」

「その生き物に、『エレンとずっと一緒にいたい』と願い、それが叶ったとしたら、どういう状況になると思う?」

 考え込む素振りをしながら、アルミンが頬を掻いた。

「随分と、おもしろい例え話だね。ユニークすぎて、何の例えなのかさっぱり分かんないや」

 それは、仕方がない。何かの例えではなく、実際にあったことなのだから。

「そうだね。そういう願いをしたくなるミカサの気持ちも分かるけど、僕はその願い事はあまりお勧めしないな」

「どうして?」

「だって、傍にいることしか願わなかったら、エレンの生死は問われないかもしれないじゃないか」

「……えっ」

 そんな可能性、考えたこともなかった。

「エレンが死ねば、エレンは二度とミカサから離れることがない。だから、ずっと一緒にいられる。昔の寓話なんかだと、そういうこともありそうじゃない? もしエレンが死ななくても、二度と歩けなくなるとかさ」

「確かに、それもそうだ。それはよくない。何とかならないだろうか」

「何とかって言われてもなあ。エレンみたいに落ち着きのないタイプだと、性格を変えちゃうか、物理的にミカサから離れていかないようにしないと難しいかもね」

「性格が変わったら、それはもうエレンではない。いや、性格が変わったくらいで私がエレンを嫌いになることはないが、それでも」

「分かってるよ、ミカサの考えてることは。何年、友達やってると思ってるのさ」

 本当にそうだ。アルミンは、エレンや私のことをよく理解してくれている。だからこうして、何かあるとアルミンに頼ってしまう。悪い癖だ。

「つまり、エレンに関することを願うにしても、傍にいること以外を願った方がいいということ?」

「その方がいいと、僕は思うよ。それにしても、願いを叶えてやるから戦えって、随分とあこぎな話だね」

「確かに、そうかもしれない」

「でもよっぽど切羽詰まってる人だったら、そういう話にも乗っちゃうんだろうな」

 アルミンなら、きっとこんな誘いに乗らないのだろう。だが、私はそれほど強くない。エレンが離れて行ってしまうかもしれないという恐怖感に、勝てない。

「ありがとう、アルミン。話を聞いてもらえてよかった」

「どういたしまして。実際にミカサがどんな問題を抱えてるのか知らないけど、また何かあったら言ってね。僕でよければ、いつでも相談に乗るよ」

「うん。本当にありがとう、アルミン」

 

 

「キュゥべえ」

 公園で名前を呼ぶと、白くて小さな影が近づいてくる。

「やあ、ミカサ。来ると思ってたよ。願いは決まったかい?」

「決まった。私は、エレンを守る力が欲しい。自由を望むエレンが、心置きなくどこにでも行けるように。エレンが危ない目に遭わないように。私が、エレンを守る」

 言い終わった瞬間、胸が苦しくなる。胸を押さえていると、何か光るものが現れた。

「契約成立だ。それは、君のソウルジェムだよ。そのソウルジェムは、君の魔力の源なんだ。近くに魔女がいれば、そのソウルジェムが反応する。すごく重要なものだから、大事に扱ってね」

「ソウル、ジェム?」

「うん。ソウルジェムは、魔法を使うごとに少しずつ穢れを溜めこんでいく。その穢れを取り除くためには、魔女を倒して得られるグリーフシードに穢れを移し替えるしかないんだ」

 ソウルジェムと呼ばれる物を手に取って見る。まるで、宝石みたいだ。

「これで君は、晴れて魔法少女の仲間入りだ。最初は分からないことも多いと思うから、僕が行動を共にしてアドバイスをするよ。この間も言った通り、他の人間には僕は見えないから、安心して」

「そう。分かった」

 今はまだ実感がないが、これで私は、エレンを守る力を手に入れたんだ。エレンがどんなに無茶をしても、私が守って、傍にいることができる。エレンの道行きを、誰にも邪魔させたりしない。

「それじゃあ、ミカサ。さっそく行こうか」

「行くって、どこに?」

「パトロールだよ。いつ魔女が現れるか、分からないからね。この町の中を、一通り歩いて探すんだよ」

「なるほど。確かに、魔女を見逃しては大変だ」

 私が歩き出すと、キュゥべえも後をついてくる。それはいいのだが、このパトロールというのは、毎日ずっと、行わなければいけないものだろうか。だとすれば、今までみたいにエレンやアルミンと一緒に帰って、途中で寄り道をすることも難しい。

 私は、早まったのだろうか。いやしかし、願いを叶えてもらった代償だ。これくらいは甘んじて受け入れなければならない。

 歩き出して、どれくらい経っただろうか。ソウルジェムが反応し出した。

「近くに魔女がいるよ。もう少し歩いてみて」

 足を進めると、ソウルジェムの反応がより強くなる。もう少しだ。

「ミカサ、あれを見て」

 キュゥべえの視線の先を見ると、球体に針がついた形のものが木に刺さっていた。

「あれがグリーフシードだ。もうすぐ孵化するよ」

「孵化? 何だか、卵みたい」

「そうだね。魔女の卵のようなものだと思ってもらっていいかもしれない。さあミカサ、変身して。もう君は、やり方が分かってるはずだよ」

 頷いて、変身する。途端に、制服から兵士か何かのような恰好に変わった。だが、一応スカートではある。よく分からない服装だ。

「じゃあ、魔女の結界に入ろう」

 キュゥべえと一緒に、魔女の結界とやらの中に入った。様々なものをコラージュしたような空間が広がる、不思議な場所だ。本が蝶のように飛び交っている。

「ここが、魔女の結界?」

「うん。来るよ、気を付けて」

 キュゥべえの言葉と同時に、開けた場所に出た。そこでは、本棚をめちゃくちゃに歪ませたようなものが蠢いている。気持ち悪い。

「もしかして、あれが魔女なの?」

「そうさ。さあミカサ、戦って。戦わなきゃ、君がやられるよ」

 魔女が、私に気が付いた。本をこちらに飛ばしてくる。魔法で剣を二本出し、本を斬り付けて回避した。

「あの魔女を倒せばいいの?」

「そうだよ。僕は助言しかできない。戦うのは君だ」

 またしても本が飛んでくる。それらも斬り捨てて、魔女へ向かって走って行った。魔女と言うから、もう少し人に近い姿かと思っていたが、そうではないのか。

 魔女を両手の剣で、抉るように斬る。魔女が暴れて抵抗してくるが、剣で防いでまた斬った。一見すると堅そうな本棚が、剣でぼろぼろになる様子は不思議だ。

「ミカサ、油断しちゃ駄目だ。完全に倒さないと意味がない」

「分かってる!」

 魔女はまだ、倒れていない。まだ、攻撃してくる可能性がある。

 何度も斬り、魔女の身体を抉っていくと、激しく暴れていた魔女が大人しくなってきた。魔女が完全に動かなくなると、空間が揺れ、元々いた町に戻る。

「キュゥべえ。これで、いいの?」

「うん、上出来だよ。初めて戦うとは思えない」

「そう。なら、よかった」

 身体が、震える。倒せたからよかったが、勢いよく飛んでくる本をまともに受けていたら、魔女が他の攻撃も行っていたら、どうなっていたのだろうか。怖かった。怖かった!

「ミカサ、グリーフシードが落ちてるよ。ソウルジェムを浄化するんだ」

「……うん、分かった」

 グリーフシードを拾い、ソウルジェムに近づける。ソウルジェムの濁りがグリーフシードに移り、ソウルジェムが輝いた。

「さあ、ミカサ。パトロールを続けよう。まだ他にも、魔女がいるかもしれないからね」

 あんなのが、他にも? まだ戦うの? いやしかし、戦わないといけないと分かっていて、選んだのは私だ。

「うん、行こう。キュゥべえ」

 

 

 それから毎日、一緒に帰れないとエレンやアルミンに告げて、一人で帰った。そして、キュゥべえとパトロールをして、たまに魔女と戦うという日々を過ごした。

 キュゥべえと契約してから三回目の日曜日に、エレンが家に来た。一緒に出掛けようと言われ、了承する。どうせパトロールのために外に出ないといけなかったのだし、ましてやエレンからの誘いだ。断るわけがない。

 てっきりアルミンも一緒だと思ったのだが、支度をして外に出ると、エレンしかいなかった。

「二人だけ?」

「ああ。嫌か?」

 不安そうなエレンに、首を横に振る。

「そうか。ならいい。行くぞ」

 歩き出したエレンの後に、私も続いた。これはもしかして、デートだと思っていいのだろうか。

「エレン、どこに行くの」

「別に、考えてない。たまにはいいだろ、あてどもなくぶらぶらするっていうのも」

「確かに」

 エレンと二人きりで、のんびりした時間を過ごすなんてそうそうない。魔女がいればどうせソウルジェムの反応で分かるのだし、それまでは魔女のことは忘れて、エレンと一緒にいるひとときを楽しもう。

 エレンと街中を歩きながら、ウィンドウショッピングをしたり、大道芸人の芸を見たり、ファストフード店で向かい合って食事をしたりしながら時間が流れていった。何だか本当に、デートみたいだ。夢みたい。

 エレンに促されるままに横断歩道を渡ろうとしたところで、車が横から走ってきた。赤信号なのに、止まる気配がない。このままでは、エレンにぶつかってしまう。

「エレン!」

 エレンの前に飛び出し、思わず車を蹴ったところ、車の前方が壊れて止まった。私は、傷一つない。

 周りから、驚きの声が上がる。車の運転手は、呆気にとられている様子だ。だが、これで私はエレンを守れた。キュゥべえは確かに、私の願いを叶えてくれていた。

 エレンの方を向くと、呆然とした表情で私を見ていた。だけどすぐに、私の腕を掴んで走り出す。

「エレン、ちょっと、痛い」

 そのまま走り、公園に入った。周りに誰もいないのを確認して、エレンが私の手を離す。

「何だよ、さっきの」

「何って、車のこと?」

「他に何があるんだ。あんなの、普通じゃねえ。いくら何でも、おかしいだろ」

 確かに、エレンから見ればそうだろう。しかし、キュゥべえとの契約について話すわけにもいかない。エレンは優しいから、きっと気にしてしまう。

「もしかして、最近お前が、一人で帰るのと関係あるのか?」

 私の肩が跳ね上がる。エレンは溜息を吐いて、前髪を搔き上げた。

「ジムにでも行き始めたのか? それにしてもこんな短期間で、あそこまで力がつくとも思えないけどな。最初は男でもできたのかと思ったけど、オレと二人で出かけるくらいだから、それはないか」

「それを確かめるために、二人で?」

「ああ。試すようなことをして、悪かった」

「いえ、それは構わない」

 エレンと二人の時間を過ごせて楽しかったし、私が一人で帰るのをそこまで気にしていたなんて、申し訳ない。

「それにしても、いくら力があるからって、車を蹴るなんて無謀だ。爆発でもしたらどうする」

「それもそうだ。ごめんなさい」

 エレンが肩をすくめる。

「まあ、それはいい。誰一人、怪我もなかったんだからな。それで結局、何でなんだ?」

「それは、一人で帰ること? それとも、さっきのこと?」

「両方だ。いやでも、どっちが気になるかって言ったら、オレ達を置いて帰る方だな」

 エレンの手が、私の肩を掴んだ。

「どうしてだ、ミカサ」

 力強い金色の目が、私を見つめる。私の好きな、エレンの瞳。それでも、

「それは、言えない。ごめんなさい」

「どうしてもか?」

「……どうしても」

 エレンが眉を寄せる。ごめんなさい、エレン。あなたを不安にさせてしまって。

「もしかして、本当に、男でもできたのか? オレのことは、昔から知ってるから、男として意識してないとか」

「そんなんじゃ」

「大体、これだって怪しいと思ってたんだ」

 エレンが私の手を掴み、目線の高さまで掲げる。そこには、ソウルジェムのついた指輪があった。

「男からもらったんじゃないのか」

「違う! そんなのじゃ」

 その瞬間、ソウルジェムが反応を見せた。グリーフシードが、この近くに産み落とされたんだ。

「何だよ、これ。光ってる?」

 放っておけば、魔女が孵る。倒さないといけない。

「ごめんなさい、エレン。急用を思い出した」

「は? それは今、これからじゃないと駄目なのか?」

「今じゃないと駄目」

 エレンの手から、力が抜ける。手を解放された私は、エレンに背中を向けた。

「ありがとう、エレン。今日は楽しかった。本当に、ごめんなさい」

 走り出した私の耳に、エレンが私を呼ぶ声が届く。しかし、止まるわけにはいかない。

 どうしてだろう、こんなはずじゃなかったのに。確かに、エレンを守る力を得るという願いは叶った。だがこの契約が、エレンの傍にいるという、一番の望みから私を遠ざけている。

 私は、何をやっているのだろう。エレンにも不快な思いをさせてしまった。しかし私は、これまでの戦いで、魔女によって我を失った人を何人も見た。魔女に気づくのが少し遅れれば、命がなかった人だっていた。私が戦わなかったら、魔女に魅入られた人達は死んでしまう。この事実を知ってしまった以上、やめるわけにはいかない。それにやめてしまえば、私のソウルジェムも濁ってしまう。

 でも、ソウルジェムが濁ってはいけない理由って、何だろう。私は、それを知らない。濁り切った時に、どうなるのかも。

「どうしたんだい? ミカサ。こんなところで立ち止まって。早くしないと、グリーフシードが孵化してしまうよ」

 いつの間に、キュゥべえがここに来たのだろうか。ああそうだ、キュゥべえは元々、この公園にずっといたんだ。

「うん、分かっている」

 

 

「ミカサ。今日も一緒に帰れないの?」

「ええ。ごめんなさい、アルミン。また明日」

 アルミンの返事も聞かず、教室を後にする。エレンの顔を見れば名残惜しくなるから、帰り際には見ないようにしていた。

 キュゥべえと契約してから、何日が経っただろうか。もう思い出せない。私はただ今日も、魔女を見つければ狩る。ただそれだけだ。そして、これからもずっと。エレンやアルミンと過ごした時間は、幸せな夢だったと思えばいい。私はただ、魔女を倒す人形であればいいんだ。

 でもそうやって、エレンの傍にいるという願いまで忘れたら、私はどうなるのだろうか。

 そんなことを考えながら歩き続ける。今日は、魔女と出会わない。そもそも最近は、契約してすぐの頃と比べると、魔女を見かけない。見かけても、グリーフシードを持っていないことが多くて、ソウルジェムがかなり濁ってしまっている。そろそろ浄化しないと駄目だろうが、そんなのは些細なことだ。魔女を倒すことこそが重要で、魔女がいないなら、それに越したことはない。あと公園を確認すれば、今日のパトロールは終わりだ。

 公園に足を踏み入れ、進み続ける。陽がだいぶ傾いている時間の公園は静かだ。キュゥべえと初めて会った日のことを思い出す。

 園内をくまなく歩き回ったけど、ソウルジェムは反応しなかった。今日のパトロールはこれで終わりだ。早く帰ろう。

「ミカサ」

 声の方を向くと、エレンが立っていた。

「どうしたの、エレン」

「どうしたの、じゃねえよ。お前こそ、こんなところで何やってるんだ。公園なんて歩き回って」

「……見てたの?」

 全く気付かなかった。エレンはもしかして、ずっと私の後を追っていたのだろうか。それとも、公園で私が来るのを待っていた?

「ミカサ。お前、ここのところ変だぞ。本当に何やってるんだよ。何で言えないんだ」

 エレンが私に近づいてくる。

「エレンには、関係のないことだ」

「おばさんから聞いたぞ。最近、夜遅くに帰ることもあるって。もしかしてやっぱり、男か? こうして適当に時間を潰して、これから会いに行くのか?」

「違う。本当に、それはない」

 私が首を左右に振っても、エレンの表情は晴れない。でも、エレンを守るという願いで魔法少女になり、魔女と戦っているなんて、言えるわけがない。

「そこまで言うなら、証拠を見せろ」

「証拠? どうやって」

「そんなの、簡単だろ」

 エレンが私の腕を掴み、引っ張る。近くのベンチに、投げるように私を座らせた。エレンが私に覆い被さり、押し倒されている格好になる。

「見せてみろよ。お前が、他の男の物になったりしてないって」

 エレンが右手だけで、私の制服のボタンを外す。左手は、私の太ももを撫でてきた。

 優しいエレンがこんな行動に出るなんて、私はそこまでエレンに心配をかけていたんだ。ごめんなさい、エレン。私が一番傍にいたいのは、エレンだから。エレンになら、構わない。これでエレンの不安が晴れるなら、私を好きにして。

 そう思うのに、涙が出てくるのは、どうしてだろうか。

 エレンとの行為は、とても痛くて、熱くて、激しかった。エレンは私の中から出た後、私のスカートの中を見た。

「すげえ血。本当に処女だったのか。まあ今回は、男じゃないっていうのは信じてやる」

 エレンは自分の服を整えると、すっかり暗くなった公園から去って行った。エレンと繋がっていたところから、何かが零れてくる。

 今回は、ということは今後も同じようなことが続いたら、またエレンは同じ疑いを持つのかもしれない。その時は、どうすればエレンに信じてもらえるのだろうか。処女じゃなくなった以上、今回の方法は通用しない。

 いっそ、言ってしまおうか。私が魔法少女になったことも、全て。でも、それをどうやって信じてもらうの? キュゥべえは、エレンには見えない。まさか、魔女の結界に連れていくわけにもいかないし。もしエレンが魔女の結界に迷いこむことがあれば、当然、私が守る。キュゥべえとの契約もあるのだから、私にはその力がある。しかし、私が自らエレンを危険な結界内に入れるなんて、ありえない。

 だがもう、限界だ。ごまかすことなんてできない。エレンにこんなことまでさせてしまうなんて、私は何をやっているのだろう。私はただ、エレンの傍にいられれば、それでいいのに。こんなことなら、魔女退治なんてしたくない。もう嫌だ。いつまでこんなことが続くの? 今でもこんなに、エレンは嫌な思いをしているのに。

 最早、何もかもがどうでもいい。エレンの心を乱しているのが私なら、私が消えるべきなんだ。どうせ私がいなくたって、またキュゥべえと契約を交わす少女は現れる。

 いっそのこと、魔女なんて生み出す世界ごと、私も消えてしまえればいいのに。

 そう思った瞬間、視界が暗くなる。私の中で淀んでいた暗いものが全て解放されるような、そんな気がした。

 

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update 2014/3/16