今度は
コミックス特典コースターの吸血鬼鹿島くんと神父堀ちゃんネタが入ってます。
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暗闇に包まれ、荒れ果てた教会の中で、二人の男女が向き合っていた。神父である男は十字架を片手に、マントを纏う女を見ている。
「どうしたんですか? 私を退治しに来たんでしょう」
寂しそうに笑う女に、男が首を横に振る。
「違う。俺は、おまえだと知っていたら」
「知っていたら来なかったんですか? 駄目ですよ、怪物はみんなやっつけないと。それが神父の仕事でしょう」
彼女はきっと、もう諦めている。それどころか、この状況そのものが彼女の望みなのだ。そう気づいても、男は現実を受け入れられない。
「何で、人間に見つかるようなことをしたんだ」
「けりをつけたかったんです。私達みたいな、人間を害することでしか生きられない存在はあってはならないんです。私の代で、この負の連鎖を断ち切りたいんですよ」
「それを、俺にやれと」
今度は嬉しそうに女が笑った。
「神父様はもちろん知ってますよね。私達の弱点の一つが炎だって」
「ああ、そりゃな」
「こんなこと言うと笑われるかもしれませんが、私の心はもう焼き尽くされてしまってるんです。恋の炎ってやつですね。だからこう見えて私、結構ぼろぼろなんですよ」
男が目を見開く。女は男に近づき、彼の頬を撫でた。
「あなたが点けた火です。だから、あなたの手で消してください。今であれば、あなたが手を下すなら、きっと私はすぐに死にます」
「でも、俺はおまえに」
「私を助けると思って、お願いします。すっかり灰になった私の心を、未だにこの炎が燃やそうとしてるんです。苦しいんですよ」
泣きそうな表情で顔を覗き込んでくる女を、男が抱きしめた。彼女の頭を撫でると、ゆっくりと背中に腕が回される。男の肩に、雫が一粒おちた。
「私も、人間に生まれたかったです」
「……そうか。俺は、吸血鬼になりたかったよ。それなら何百年でも一緒にいられただろ」
「もう遅いですよ」
「だろうな。もう、おまえの考えが変わるなんて思ってねぇよ」
女の腕が離れる。男も彼女を解放し、僅かに距離をとった。
「念のため訊くけど、本当にいいんだな」
「はい。一思いにやってください」
両手を広げた女へ向け、男が銀の杭を振りかざす。勢いよく下ろされた杭は、女の胸を貫いた。血しぶきが上がり、女が背中から倒れる。
「なぁ、今どんな気分なんだ」
「どうって、すごく、身体が冷たいです。でも、ちょうどいいや。やっと、火が消えそうです」
これ以上ないほどの笑みを浮かべた女は、「ありがとうございます」と呟くと目を閉じた。
(もし生まれ変わることができるなら、今度は――)
「何だそれ、次の舞台の案か?」
「違いますよ。こういう夢を見たって話です」
「別に吸血鬼ものの映画とか見てたわけじゃないのに謎ですねー」と笑う鹿島遊に、堀政行が溜息を吐いた。
「別にそういうの見てなくても、夢に吸血鬼が出てくることくらいあるんじゃねぇか」
「そうかもしれませんけど、ただ出てくるんじゃなくて私が吸血鬼だったんですよ。それだけでも妙な気分だったのに、恋の炎って、ねぇ」
「いつも女子を口説きまくってる奴がなに言ってんだ。それよりさっさと行くぞ」
早足になった堀が、鹿島の前を行く。その瞬間、彼女は気が付いた。夢の中に出てきた神父が、堀に瓜二つであったことに。
(生まれ変わることができるなら、今度は私も人間になって、あなたと一緒に生きたい)
夢の中で聞いた声が、鹿島の頭に響いた。
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update 2015/4/11