短文置き場

数百字くらいのSSを適当に投げるところです。腐向けも普通に出てくるのでご注意を。

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スロット結果SS

魔法使いと黒猫のウィズ アポヴァカ

男性精霊闇鍋スロットの結果を元に書いたものです。

スロット結果
《アポロニオが 息を荒げて 「なん…でもない…っ!」と言う》

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 アポロニオは、弟のヴァッカリオを愛している。家族としても、一人の男性としてもだ。無論、血の繋がった兄弟である以上、その思いを告げる気はない。しかしそのために、困った状況になることがある。
 左にいるヴァッカリオに目を向け、アポロニオが息をついた。自分にもたれかかり、寝息を立てる姿。身内として信頼してくれているのは嬉しいが、無防備すぎる。
 首に触れる、柔らかな髪。長いまつげが、美しい顔に落とす影。通った鼻筋。かすかに開いた唇。あまりにも完璧で神がかりな造形に、目を奪われた。この頬に触れられたら、この唇に口づけられたら。そんな思いが頭をよぎっていく。
 わずかに首を横に振り、彼の肩を見る。この肩を抱いて、腕の中に引き寄せたいとなんど考えただろうか。
 左手を、少しずつ持ち上げた。触れる寸前で、彼の肩が動く。
「ん……」
 ヴァッカリオが身じろぎした。彼のまぶたが上がり、身体が離れる。目をこすった彼が、小さくあくびをした。
「いつの間に寝ちゃったんだろ。ごめんね、お兄ちゃん。動けなかったでしょ」
「ああいや、それは構わない。お前が甘えてくれているようで、嬉しかったぞ」
「もう、そういうとこだよ。お兄ちゃん」
 苦笑した彼に、笑顔を返す。琥珀色の瞳を細める弟に、
「かわいいな」
 そう漏らして、目を丸くした。
「い、今のはだな。そう、お前の笑った顔が、まるで昔から変わらず、つい口から出て」
 ヴァッカリオが苦笑いする。
「なんで慌ててるの、お兄ちゃん」
「なん、でもない! 何も変な意味はないぞ!」
 弟が首をかしげた。
「う、うん」
 不思議そうな顔が、また愛らしい。そんなことを思いながら、弟に感づかれていないことを祈った。

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